外国人介護職員の雇用について
現在、外国人を介護職員として雇用する事業所が増えてきています。受け入れに関する現状や実態について、また、迎え入れるためにはどのような制度や方法があるのかなど、ご紹介いたします。
外国人介護職員の雇用状況
外国人雇用はどのくらい導入されているか?
平成31年厚生労働省の調査によると、介護事業者が外国人職員を雇用する方法の1つである、EPAに基づく介護福祉士候補者の受け入れは、平成20年から始まり、平成30年度には累計4,302人、808施設での受け入れになるまでに、年々増加していきました。
また、介護福祉士の資格を取得して日本の介護事業所で働くために、外国人が日本の介護福祉士養成校に留学するケースも出てきており、留学生入学者数は、平成28年度257人、平成29年度 591人、平成30年度1,142人と増加しています。
このほか、介護職種の技能実習計画の申請件数は、平成30年12月末現在で1,516人分となっており、そのうち 946人分の認定が出ており、技能実習生として、順次入国しています。
さらに、平成31年4月から新たな在留資格として「特定技能」が創設され、さらに外国人の受け入れが拡大しています。
外国人雇用を予定している事業所の割合は?
外国人職員を受け入れる予定については、すでにEPA介護職員を雇用している事業所では、「今後も受け入れる予定」が 78.9%と、今後の受け入れにも積極的な施設が約8割を占めています。
また、これまで、外国人職員を雇用したことがない事業所においても、「受け入れる予定」が20.2%となっており、約5分の1の施設は雇用に向けて検討していることが伺えます。
外国人職員に対する利用者や家族の反応は?
介護職種は対人サービスであり、人の命に係わる業務のため、施設利用者やその家族にとって職員の質は重要視するポイントであることは明確です。恐らく、外国人職員に対して不安を抱く方はいらっしゃるかと思います。
しかし、実際に日本で働く外国人職員に対する、施設利用者やその家族からの評価についての調査では、「満足」と評価している割合が65.1%、さらに約9割の利用者・家族が「普通」以上の評価をしていることが伺えます。
特にサービス面では、丁寧な声かけや対応などを高く評価する意見があげられているそうです。
外国人介護職員の雇用制度
外国人介護職員雇用制度の概要比較
外国人介護職員は主に「技能実習」「特定技能1号」「在留資格:介護」「EPA(経済連携協定)」の4つのいずれかの制度で雇用することができます。各制度によって条件や雇用のしやすさなどが異なるため、自分の事業所にあった雇用制度をつかって外国人職員を雇用することになります。
各制度を大まかに比較すると、以下のようになります。
介護福祉士の資格を持っているか?
技能実習 資格なしただし、実技要件等を満たせば受検可能 |
特定技能1号 資格なしただし、実技要件等を満たせば受検可能 |
在留資格:介護 介護福祉士 |
EPA 資格なしただし、資格取得を目的としている |
どのくらいの期間働いてもらえるか?
技能実習 最長5年※1 ※2 |
特定技能1号 最長5年※1 ※2 |
在留資格:介護 永続的な就労可能 |
EPA 資格取得後は永続的な就労可能一定の期間中に資格取得できない場合は帰国 |
ただし、介護福祉士を取得すれば、在留資格「介護」を選択でき、永続的な就労が可能
3年目まで修了した技能実習生は「、特定技能1号」に必要な試験が免除される(在留資格を「特定技能1号」に変更した場合、技能実習と特定技能をあわせて最長10年となる)
母国での資格や学習経験は?
技能実習 監理団体の選考による |
特定技能1号 個人による |
在留資格:介護 個人による |
EPA 看護系学校の卒業生 |
日本語能力の目安は?
技能実習 入国時の要件はN4程度 |
特定技能1号 入国時の要件は・ある程度 日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力・介護の現場で働く上で必要な日本語能力 |
在留資格:介護 一部の養成校の入学要件はN2程度※3 |
EPA 大多数は就労開始時点でN3程度※4 |
「一部の養成校」とは、留学生の入学者選抜において、日本語能力試験JLPTでN2以上に合格、もしくは日本語試験でN2相当以上と確認できることを要件としている介護福祉士養成校のことを指す
インドネシア・フィリピンの入国時の要件はN5程度だが、インドネシア人 及びフィリピン人候補者の約90%が、6か月間の訪日後日本語研修終了までにN3程度の日本語水準に到達(平成30年度実績に基づく)
日本語能力 | 目安 |
---|---|
N1 | 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる |
N2 | 日常的な場面で使われる日本語の理解に加えて、より幅広い場面で使われる日本語を理解することができる |
N3 | 日常的な場面で使われる日本語を、ある程度理解することができる |
N4 | 基本的な日本語を、理解することができる |
N5 | 基本的な日本語を、ある程度理解することができる |
受け入れ調整機関などの支援はあるか?
技能実習 あり監理団体による受け入れ調整 |
特定技能1号 あり登録支援機関によるサポート |
在留資格:介護 なし |
EPA ありJICWELSによる受け入れ調整 |
雇用可能なサービス種別に制限はあるか?
技能実習 制限あり訪問系サービスは不可 |
特定技能1号 制限あり訪問系サービスは不可 |
在留資格:介護 制限なし |
EPA あり介護福祉士の資格取得後は、一定条件を満たした事業所の訪問系サービスも可能 |
技能実習について
外国人技能実習制度とは
外国人技能実習制度は、先進国である日本で発展途上国の人材を一定期間受け入れ、技能実習を通して日本の技術や知識を学んでもらうことで、母国の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としています。
介護技能実習生受け入れの流れ
1年目終了時 | 学科試験・実技試験 |
---|
3年目終了時 | 実技試験 |
---|
5年目終了時 | 実技試験 |
---|
入国時はN4程度が要件
日本語能力について、入国時は日本語能力試験 N4 程度が要件ですが、1年後はN3程度が要件となります。1年後に N3 程度に満たない場合は、当面、雇用されている事業所で介護の技能の習熟のために必要な日本語を学ぶことなどを条件に、引き続き3年目まで在留することができます。
1~2年毎に試験があり、合格すれば雇用期間が長くなる
入国1年後の試験に合格すると追加で2年、3年後の試験に合格するとさらに2年、最長5年の実習を受けることができます。その後は帰国し、母国で介護業務に従事します。
ただし、技能実習期間中に介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更して、日本で永続的に働くこともできます。また、3年目まで修了した技能実習生は、「特定技能1号」に必要な試験が免除されるため、在留資格を変更すれば、8年~10年日本で介護職員として在留できます。
監理団体による講習や調整の支援あり
受入れにあたっては、事業協同組合や商工会等の団体が監理団体として、技能実習生を受け入れて講習を行い、実習先となる事業所との調整を担います。
特定技能1号について
特定技能の制度とは
特定技能は、平成 31年4月から始まった、就労目的で外国人材を受け入れるための在留資格です。
技能実習との大きな違いは、技能実習は「技術移転・国際協力目的」である一方、特定技能は「就労目的」であることです。
日本の深刻な人手不足を解消するために、2019年4月から新たに導入された在留資格で、経済産業省や厚生労働省などの省庁が、人手不足であると定めた介護を含む14の職種に対して、外国人の就労が認められます。
介護職種の特定技能1号外国人受け入れの流れ
雇用後すぐに人員配置基準に含めることが可能
特定技能1号での在留には、技能水準および日本語能力水準の試験に合格する必要があります。したがって、特定技能1号の外国人職員は専門人材として期待でき、雇用後すぐに人員配置基準に含めることができます。
技能実習2号を修了していれば試験免除
技能実習2号を満期で修了していれば、特定技能1号に必要な技能・日本語ともに能力があるとみなされるため試験が免除されます。
現在技能実習中の実習生だけでなく、すでに帰国してしまった実習生も試験免除の対象となるため、技能実習から引き続き特定技能1号で雇い入れるほか、帰国した実習生も改めて特定技能として受け入れることが可能です。
最長5年の雇用が可能
特定技能1号では5年の雇用となります。5年後は帰国ですが、介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更して、永続的に働くことができます。
また、特定技能の前に技能実習として受け入れれば、最長10年の雇用が可能です。
特定技能2号について
特定技能2号については、現状、介護職種は対象外のため移行することができません。
在留資格「介護」について
在留資格「介護」制度について
日本の介護福祉士養成校に通う留学生は、卒業して国家試験に合格し、介護福祉士の資格を取得すると、「介護」という在留資格で在留することができます。
在留資格「介護」の外国人受け入れの流れ
(その前に日本語学校通う場合もあり)
(介護福祉士養成校留学中にアルバイトも可能)
介護福祉士の資格あり、永続的な就労可能
在留資格「介護」の外国人は、介護福祉士資格を持っているため、専門人材として期待でき、雇用してすぐに人員配置基準に含めることができます。
また、在留資格「介護」の在留期間は、本人が望む限り、繰り返し更新することが可能なため、永続的に働くことができます。
なお、介護福祉士養成校の規則にもよりますが、養成校に通学している時からアルバイトとして雇用することもできます。
養成校の入学要件の目安はN2レベル以上
介護福祉士養成校での留学生の入学者選抜について、日本語能力試験N2以上に合格、もしくは日本語教育機関で6か月以上教育を受け日本語試験で N2 相当以上と確認できること等が定められています。実際の入学要件や受入状況は、学校によって異なります。
高い採用ハードル
大学を卒業しており、介護福祉士の国家資格および高い日本語能力を持ち、永続的な就労が可能な人材のため、激しい人材獲得競争により採用が困難なことがあります。
また、受け入れ調整機関がないため、事業者が自ら採用活動を行う必要があります。
当組合から受け入れすることはできません。
EPA(経済連携協定)について
EPAに基づく雇用制度について
EPA(経済連携協定)とは、日本と相手国の経済活動の連携強化図るもので、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国から人材を受け入れる制度です。
EPAに基づく外国人介護職員雇用の流れ
訪日前の日本語研修(6~12か月)・日本語能力試験
(2.5~6か月)
母国での学習経験や資格をもつ人を雇用できる
介護・看護の知識や経験に関して一定の要件を満たす外国人が、日本語研修を受けてから入国します。この日本語研修の前後で事業所とのマッチングが行われます。
日本語の入国要件は国によって異なる
日本語能力については、インドネシア・フィリピンは日本語能力試験N5レベル以上、ベトナムはN3以上で入国することができます。日本入国後はさらに日本語や介護の基礎に関する研修を受けた上で、事業所での雇用となります。
なお、インドネシア人およびフィリピン人においても、約9割は就労開始時点でN3レベル日本語水準に到達しています。(平成30年度実績に基づく)
介護士福祉士を取得すれば永続的な就労が可能
入国してから4年目に介護福祉士の国家試験を受験し、合格すれば在留期間を更新しながら永続的に働くことができます。しかし、不合格の場合は帰国しなくてはいけません。
JICWELSによるマッチング支援あり
応募者と事業所のマッチングは、JICWELS(国際厚生事業団)が唯一の受け入れ調整機関です。受け入れ人数には上限があり、すべての事業所がマッチングするわけではないため注意が必要です。
当組合から受け入れすることはできません。
高い採用ハードル
大学を卒業しており、介護・看護の知識や経験を有し、永続的な就労に繋がる人材のため、激しい人材獲得競争により採用が困難なことがあります。
各制度の詳細比較
クリックして拡大
外国人介護職員の雇用における注意点
介護は対人サービスのため、日本語によるコミュニケーションが業務において必要不可欠です。外国人職員に対して利用者が不安を抱いてしまうことがないよう、必要なレベルの日本語を習得してもらう必要があります。
基礎的な専門用語のほか、利用者の訴えを理解するのに必要な擬態語・擬声語、他職員とのコミュニケーションに必要な介護現場特有の言葉なども覚えてもらいましょう。
特に、技能実習生においては、送り出し機関の教育が充実しているかどうかで、日本語レベルにかなりの差が生じます。
外国人職員に対して、日本人と同等の処遇をしましょう。最低賃金法の遵守は当然のこととして、日本人と同等の労働を行う場合の報酬と同等額以上の報酬水準としましょう。
外国人職員が信仰している宗教によっては、食べられるものに制限がある場合や、お祈りの時間が必要な場合があります。日本人にはなじみのない文化や習慣を持っている場合もあります。それぞれの宗教や文化等をきちんと確認し、尊重するようにしましょう。
外国人職員が働いていくためには、生活環境を整えることも重要です。住まいの確保や職場までの交通手段の確保など、日本人でないとわかりにくいこともあるため、生活面でのサポートをしましょう。
在留管理に配慮しましょう。在留期間の更新手続き等、日本語が難しい部分もあるため、サポートをしましょう。在留期間更新等の手続き時に申請した内容から逸脱する就労(異なる業務や安易な施設異動等)はできないため、雇用主は注意が必要です。
外国人職員を雇用する際は、一緒に働き、教育を担う現場職員の理解を得ることがとても重要です。事業所としてどのような体制を整えるのか、現場職員に丁寧に説明してから採用活動を行いましょう。