介護技能実習生制度について

介護職種の外国人技能実習生を受け入れる前に知っておきたい制度について、わかりやすい説明で解説します。業務内容は?どのような実習生が対象?受け入れ企業はどのようなことをすればよいの?など、よくある疑問を解決いたします。

技能実習制度に介護職種の追加

平成29年11月1日に、技能実習制度に介護職種が追加されました。技能実習制度の趣旨、「発展途上国への技術移転」に貢献できると期待されている職種のひとつである介護職種。日本は世界一の長寿国なこともあり、高齢化率も現在世界トップです。そのため、高齢者の介護施設やサービスがなくてはならない存在であり、アジアの他の国と比べると介護先進国といえる日本の技術は国際的にも意義のあるもので海外に移転するべき技術です。さらに、海外からも日本の技術を受け入れようと動き始めています。当組合で受け入れをしているミャンマー人は、人の役に立つことが善とされている国民性なため、介護職種を希望する候補生がたくさんいます。今後、介護職種で入国する介護技能実習生は増加するでしょう。

介護職種の技能実習内容

外国人技能実習制度において、介護業務とは下記のように定義されています。

身体上または精神上の障害があることにより、日常生活を営むのに支障がある人に対し、入浴や排泄、食事などの身体上の介助やこれに関連する業務

これらの業務について、技術および知識の移転のために、技能実習で行う業務内容および時間は下記のように定めされています

必須業務 技能実習生が技能や知識を修得するために必ず行わなければならない業務で、業務に従事させる全時間の2分の1以上実施する必要があります。
  1. 身体介護業務
    1. 身じたくの介護
      1. 整容の介助
        1. 整容(洗面、整髪等)
        2. 顔の清拭
        3. 口腔ケア1号・2号の場合は、状況に応じて実施
      2. 衣服着脱の介助
        1. 衣服の着脱の介助(座位・臥位)
    2. 移動の介護
      1. 体位変換
        1. 体位変換
        2. 起居の介助(起き上がり・立位)
      2. 移動の介助
        1. 歩行の介助
        2. 車いす等への移乗の介助1号の場合は、状況に応じて実施
        3. 車いす等の移動の介助
    3. 食事の介護
    4. 入浴・清潔保持の介護
      1. 部分浴の介助
        1. 手浴の介助
        2. 足浴の介助
      2. 入浴の介助
      3. 身体清拭1号・2号の場合は、状況に応じて実施
    5. 排泄の介護
      1. トイレ・ポータブルトイレでの排泄介助
      2. おむつ交換
      3. 尿器・便器を用いた介助状況に応じて実施
    6. 利用者特性に応じた対応(認知症、障害等)3号のみ実施
  2. 安全衛生業務(※)
    1. 雇入れ時等の安全衛生教育
    2. 介護職種における疾病・腰痛予防
    3. 福祉用具の使用方法及び点検業務
    4. 介護職種における事故防止のための教育
    5. 緊急時・事故発見時の対応
関連業務・周辺業務 関連業務は必須業務に関連して行われることのあり、修得をさせようとする技能や知識の向上に寄与する業務のこと。業務に従事させる全時間の2分の1以下の実施にする必要があります。
周辺業務は必須業務に関連して通常携わる業務で、業務に従事させる全時間の3分の1以下の実施にする必要があります。
  1. 関連業務
    1. 掃除、洗濯、調理業務
      1. 利用者の居室やトイレ、事業所内の環境整備
      2. 利用者の衣類等の洗濯
      3. 利用者の食事にかかる配下膳等
      4. 調理業務(ユニット等で利用者と共に行われるもの)
      5. 利用者の居室のベッドメイキングやシーツ交換
    2. 機能訓練の補助やレクリエーション業務
      1. 機能訓練の補助や見守り
      2. レクリエーションの実施や見守り
    3. 記録・申し送り
      1. 食事や排泄等チェックリスト等による記録・報告
      2. 指示を受けた内容に対する報告
      3. 日誌やケアプラン等の記録及び確認
      4. 申し送りによる情報共有
  2. 周辺業務
    1. お知らせなどの掲示物の管理
    2. 車いすや歩行器等福祉用具の点検・管理
    3. 物品の補充や管理
  3. 安全衛生業務(関連業務、周辺業務を行う場合は必ず実施する業務)
    1. 上記※に同じ

安全衛生業務は、必須業務・関連業務・周辺業務において、それぞれ従事させる時間のうち10分の1以上を充てる必要があります。

介護職種の技能実習生に関する要件

技能実習制度本体(主な要件)

  • 18歳以上であること。
  • 制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること。
  • 帰国後、修得をした技能を必要とする業務に従事することが予定されていること。
  • 従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること、又は技能実習に従事することを必要とする特別な事情※があること。
  • 本国の公的機関から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること。
  • 技能実習を過去に行ったことがないこと。

技能実習に従事することを必要とする特別な事情
これに該当するのは以下のような場合です。

  • 教育機関において同種の業務に関する教育課程を修了している場合
  • 技能実習生が技能実習を行う理由を具体的に説明でき、かつ、技能実習を行うために必要な最低限の訓練を受けている場合
  • 実習実施者又は監理団体と送り出し機関との間の技術協力上特に必要があると認められる場合

介護職種の要件

介護職種の技能実習生は、技能実習制度本体の要件に加えて、以下の要件を満たす必要があります。

日本語能力要件

介護職種で技能実習を行うには、技能実習生本人の日本語能力が一定水準以上でなければなりません。第1号技能実習生と第2号技能実習生について、下記の日本語能力要件を満たす必要があります。

第1号技能実習(1年目) 日本語能力試験のN4に合格している者、その他これと同等以上の能力を有すると認められる者※であること。
第2号技能実習(2年目) 日本語能力試験のN3相当、その他これと同等以上の能力を有すると認められる者※であること。

その他これと同等以上の能力を有すると認められる者
日本語能力試験との対応関係が明確にされている日本語能力を評価する試験(例「J.TEST実用日本語検定」「日本語NAT-TEST」)における日本語能力試験に相当するものに合格している者

「N3」「N4」のレベルとは
「N3」:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
「N4」:基本的な日本語を理解することができる
(日本語能力試験:独立行政法人国際交流基金、公益財団法人日本国際教育支援協会が実施)

同等業務従事経験(いわゆる職歴要件)

同等業務従事経験(いわゆる職歴要件)について、介護職種の場合は、例えば以下の者が該当します。

  • 外国における高齢者もしくは障害者の介護施設または居宅等において、高齢者又は障害者の日常生活上の世話、機能訓練又は療養上の世話等に従事した経験を有する者
  • 外国における看護課程を修了した者又は看護師資格を有する者
  • 外国政府による介護士認定等を受けた者

介護職種の実習実施者に関する要件

技能実習制度本体(主な要件)

  • 技能実習を行わせる事業所ごとに、申請者又はその常勤の役員もしくは職員であって、自己以外の技能実習指導員、生活指導員その他の技能実習に関与する職員を監督することができる立場にあり、かつ、過去3年以内に法務大臣及び厚生労働大臣が告示で定める講習を修了したものの中から、技能実習責任者を選任していること。
  • 技能実習の指導を担当する者として、申請者又はその常勤の役員若しくは職員のうち、技能実習を行わせる事業所に所属する者であって、修得等をさせようとする技能等について5年以上の経験を有するものの中から技能実習指導員を1名以上選任していること。
  • 技能実習生の生活の指導を担当する者として、申請者又はその常勤の役員若しくは職員のうち、技能実習を行わせる事業所に所属する者の中から生活指導員を一名以上選任していること。
  • 技能実習生の受け入れ人数の上限を超えないこと。

技能実習を行わせる事業所の要件

  • 技能実習を行わせる事業所が、介護等の業務(利用者の居宅においてサービスを提供する業務を除く。)を行うものであること。《下記対象施設表参照》
  • 技能実習を行わせる事業所が、開設後3年以上経過していること。
  • 技能実習生に夜勤業務その他少人数の状況下での業務又は緊急時の対応が求められる業務を行わせる場合にあっては、利用者の安全の確保等のために必要な措置を講ずることとしていること。※
  • 技能実習を行う事業所における技能実習生の数が一定数を超えないこと。
  • 入国後講習については、基本的な仕組みは技能実習法本体によるが、日本語学習(240時間。ただし、N3程度取得者は80時間とし、柔軟に設定できる。)と介護導入講習(42時間)の受講を求めることとする。

具体的には、技能実習生以外の介護職員と技能実習生の複数名で業務を行うことが必要。

対象施設

「介護」の業務が現に行われている事業所を対象とする(介護福祉士国家試験の実務経験対象施設)
ただし、技能実習生の人権擁護・適切な在留管理の観点から、訪問系サービスは対象としません。

対象一部対象対象外又は現行制度において存在しない
老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業
第1号通所事業
老人デイサービスセンター
指定通所介護(指定療養通所介護を含む)
指定地域密着型通所介護
指定介護予防通所介護
指定認知症対応型通所介護
指定介護予防認知症対応型通所介護
老人短期入所施設
指定短期入所生活介護
指定介護予防短期入所生活介護
養護老人ホーム※1
特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)
軽費老人ホーム※1
ケアハウス※1
有料老人ホーム※1
指定小規模多機能型居宅介護※2
指定介護予防小規模多機能型居宅介護※2
指定複合型サービス※2
指定訪問入浴介護
指定介護予防訪問入浴介護
指定認知症対応型共同生活介護
指定介護予防認知症対応型共同生活介護
介護老人保健施設
指定通所リハビリテーション
指定介護予防通所リハビリテーション
指定短期入所療養介護
指定介護予防短期入所療養介護
指定特定施設入居者生活介護
指定介護予防特定施設入居者生活介護
指定地域密着型特定施設入居者生活介護
サービス付き高齢者向け住宅※3
第1号訪問事業
指定訪問介護
指定介護予防訪問介護
指定夜間対応型訪問介護
指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護
障害者総合支援法関係の施設・事業
障害者デイサービス事業(平成18年9月までの事業)
短期入所
障害者支援施設
療養介護
生活介護
児童デイサービス
共同生活介護(ケアホーム)
共同生活援助(グループホーム)
自立訓練
就労移行支援
就労継続支援
知的障害者援護施設(知的障害者更生施設・知的障害者授産施設・知的障害者通勤寮・知的障害者福祉工場)
身体障害者更生援護施設(身体障害者更生施設・身体障害者療護施設・身体障害者授産施設・身体障害者福祉工場)
福祉ホーム
身体障害者自立支援
日中一時支援
生活サポート
経過的デイサービス事業
訪問入浴サービス
地域活動支援センター
精神障害者社会復帰施設(精神障害者生活訓練施設・精神障害者授産施設・精神障害者福祉工場)
在宅重度障害者通所援護事業(日本身体障害者団体連合会から助成を受けている期間に限る)
知的障害者通所援護事業 (全日本手をつなぐ育成会から助成を受けている期間に限る)
居宅介護
重度訪問介護
行動援護
同行援護
外出介護(平成18年9月までの事業)
移動支援事業
児童福祉法関係の施設・事業
知的障害児施設
自閉症児施設
知的障害児通園施設
盲児施設
ろうあ児施設
難聴幼児通園施設
肢体不自由児施設
肢体不自由児通園施設
肢体不自由児療護施設
重症心身障害児施設
重症心身障害児(者)通園事業
肢体不自由児施設又は重症心身障害児施設の委託を受けた指定医療機関(国立高度専門医療研究センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関であって厚生労働大臣の指定するもの)
児童発達支援
放課後等デイサービス
障害児入所施設
児童発達支援センター
保育所等訪問支援
その他の社会福祉施設等
地域福祉センター
隣保館デイサービス事業
独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
ハンセン病療養所
原子爆弾被爆者養護ホーム
原子爆弾被爆者デイサービス事業
原子爆弾被爆者ショートステイ事業
労災特別介護施設
原爆被爆者家庭奉仕員派遣事業
家政婦紹介所(個人の家庭において、介護等の業務を行なう場合に限る)
生活保護法関係の施設
救護施設
更生施設
病院又は診療所
病院
診療所

適切な実習体制の確保

受け入れ人数 受け入れることができる技能実習生は、事業所単位で、介護等を主たる業務として行う常勤職員(常勤介護職員)の総数に応じて設定(常勤介護職員の総数が上限)。
技能実習指導員の要件 介護職として5年以上の経験を有する介護福祉士等
技能実習計画書 技能移転の対象項目ごとに詳細な作成を求める
入国時の講習 専門用語や介護の基礎的な事項を学ぶ

日本人との同等処遇の担保

「日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であること」を徹底するため、以下の方策を講じる

受け入れ時 賃金規程等の確認
受け入れ後 訪問指導時の関係者のヒアリングや賃金台帳の確認、監理団体への定期報告

技能実習指導員の要件

  • 技能実習指導員のうち1名は資格を有すること。 (下記証明書類の提出が必要です)
    • 介護福祉士登録証
    • 看護師または准看護師の免許証
    • 実務者研修修了証明書(実務者研修修了者は8年の経験が必要)
  • 技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任していること。

介護報酬の点数

介護技能実習生は配属後7ヶ月目から人員配置基準に加算することができます。

介護技能実習の実習期間と再入国の可能性

通常実習期間は3年です。ただし、優良な監理団体、優良な実習実施機関と認定された場合は実習期間は5年となります。
実習期間終了後は、技能実習での再入国はできません。

技能実習期間中に介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更して、日本で永続的に働くこともできます。
また、3年目まで修了した実習生は、「特定技能1号」に必要な試験が免除されるため、在留資格を変更すれば、8年~10年日本で介護職員として在留できます。

技能評価試験の実施

技能実習生は1号から2号、2号から3号へ在留資格の変更をする際に、技能評価試験を受検し合格する必要があります。技能評価試験は一般社団法人シルバーサービス振興会にて実施されます。
各実習の目標とするレベルは下記の通りです。

第1号技能実習修了時(初級)
指示の下であれば、決められた手順等に従って、基本的な介護を実践できるレベル
第2号技能実習修了時(専門級)
自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践できるレベル
第3号技能実習修了時(上級)
自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を実践できるレベル