外国人技能実習生は奴隷?問題と解決策
外国人技能実習生の受け入れをしようと色々調べていると、「問題点」「失踪」「逃亡」「奴隷」などの暗い言葉を見かけることがあると思います。
それらの中には、外国人技能実数制度について誤った認識をもったまま実習生を受け入れてしまい、正しく技能実習が行われなかったために起こってしまうトラブルや問題が多く存在します。
つまり、正しい知識で技能実習を行い、トラブルや問題を未然に防ぐために対策をとることも可能だということです。
今回は、外国人技能実習制度とはどのようなシステムで、どのような事がトラブルや問題に繋がってしまうのか、正しく技能実習を行うにはどのようにすればよいのか、わかりやすく解説します。
これから外国人技能実習生の受け入れを検討されている企業のご担当者様も、現在実習を実施している企業のご担当者様も、必ずご一読いただきたい内容です。
外国人技能実習制度とは
外国人技能実習制度の目的
外国人技能実習制度は、先進国である日本で発展途上国の人材を一定期間受け入れ、技能実習を通して日本の技術や知識を学んでもらうことで、母国の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としています。
一部実例があがっているように、技能実習生は日本のための安価な労働力という誤った認識を持ってしまい、技能実習生が奴隷のように扱われてしまうケースがあります。その間違った認識が問題を引き起こす火種となります。
技能実習生は決して奴隷のような存在ではなく、母国の経済発展のために高い志を持った優秀な人材であること、また、外国人技能実習制度は国際貢献が本来の目的であるということを決して忘れてはなりません。
外国人技能実習制度の目的は、発展途上国の経済発展を担う「人づくり」に協力し、国際貢献を行うこと。
外国人技能実習生の国籍
外国人技能実習制度の対象となる国は、ベトナム・フィリピン・カンボジア・インドネシア・タイ・ミャンマー・ラオス・スリランカ・中国・モンゴル・インド・バングラデシュ・ブータン・ウズベキスタン・パキスタンの15か国です。
その中で、当組合はベトナムとミャンマーからの外国人技能実習生受け入れに特化しています。
詳しくは「21世紀マンパワー事業協同組合が選ばれる5つの理由」をご覧ください。
外国人技能実習生を受け入れる方法
外国人技能実習生を受け入れるには、大きく分けて2つの方法があります。
その中でも一般的な受け入れ方法は団体監理型で、技能実習制度の大半がこの方法で実施されています。
- 企業単独型
- 日本企業の海外現地法人などから現地職員を受け入れ実習を行う方法。
- 団体監理型
- 非営利の監理団体(協同組合や商工会議所など)が受け入れ、加盟している企業等が技能実習を実施する方法。
技能実習は「団体監理型」が一般的
外国人技能実習生の受け入れ期間
現在、技能実習生の受け入れ期間は基本3年、最長5年と定められています。
技能実習生は技能実習1号という在留資格から始まります。試験を受け、技能実習2号に移行、さらに条件を満たした場合に技能実習3号と移行を行うことで、最長5年間の技能実習が可能となります。
技能実習での受け入れ期間は基本3年。条件を満たせば5年間の技能実習が可能。
外国人技能実習生の受け入れ可能職種
外国人技能実習生の受け入れができる職種は、2021年1月時点で86職種158作業に定められています。
なお、3号移行ができる職種は限られており、2021年1月時点で3号移行職種は80職種145作業となっています。
職種 | 作業名 |
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耕種農業 | 施設園芸 |
畑作・野菜 | |
果樹 | |
畜産農業 | 養豚 |
養鶏 | |
酪農 |
職種 | 作業名 |
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漁船漁業 | かつお一本釣り漁業 |
延縄漁業 | |
いか釣り漁業 | |
まき網漁業 | |
曳網漁業 | |
刺し網漁業 | |
定置網漁業 | |
かに・えびかご漁業 | |
棒受網漁業 | |
養殖業 | ホタテガイ・マガキ養殖作業 |
職種 | 作業名 |
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缶詰巻締 | 缶詰巻締 |
食鳥処理加工業 | 食鳥処理加工業 |
加熱性水産加工食品製造業 | 節類製造 |
加熱乾製品製造 | |
調味加工品製造 | |
くん製品製造 | |
非加熱性水産加工食品製造業 | 塩蔵製品製造 |
乾製品製造 | |
発酵食品製造 | |
調理加工品製造 | |
生食用加工品製造 | |
水産練り製品製造 | かまぼこ製品製造 |
牛豚食肉処理加工業 | 牛豚部分肉製造作業 |
ハム・ソーセージ・ベーコン製造 | ハム・ソーセージ・ベーコン製造 |
パン製造 | パン製造 |
そう菜製造業 | そう菜加工 |
農産物漬物製造業 | 農産物漬物製造 |
医療・福祉施設給食製造 | 医療・福祉施設給食製造 |
職種 | 作業名 |
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紡績運転 | 前紡工程 |
精紡工程 | |
巻糸工程 | |
合ねん糸工程 | |
織布運転 | 準備工程 |
製織工程 | |
仕上工程 | |
染色 | 糸浸染 |
織物・ニット浸染 | |
ニット製品製造 | 靴下製造 |
丸編みニット製造 | |
たて編ニット生地製造 | たて編ニット生地製造 |
婦人子供服製造 | 婦人子供服既製服縫製 |
紳士服製造 | 紳士服既製服製造 |
下着類製造 | 下着類製造 |
寝具製作 | 寝具製作 |
カーペット製造 | 織じゅうたん製造 |
タフテッドカーペット製造 | |
ニードルパンチカーペット製造 | |
帆布製品製造 | 帆布製品製造 |
布はく縫製 | ワイシャツ製造 |
座席シート縫製 | 自動車シート縫製 |
職種 | 作業名 |
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さく井 | パーカッション式さく井工事 |
ロータリー式さく井工事 | |
建築板金 | ダクト板金 |
内外装板金 | |
冷凍空気調和機器施工 | 冷凍空気調和機器施工 |
建具製作 | 木製建具手加工 |
建築大工 | 大工工事 |
型枠施工 | 型枠工事 |
鉄筋施工 | 鉄筋組立て |
とび | とび |
石材施工 | 石材加工 |
石張り | |
タイル張り | タイル張り |
かわらぶき | かわらぶき |
左官 | 左官 |
配管 | 建設配管 |
プラント配管 | |
熱絶緑施工 | 保温保冷工事 |
内装仕上げ施工 | プラスチック系床仕上げ工事 |
カーペット系床上げ工事 | |
銅製下地工事 | |
ボード仕上げ工事 | |
カーテン工事 | |
サッシ施工 | ビル用サッシ施工 |
防水施工 | シーリング防水工事 |
コンクリート圧送施工 | コンクリート圧送工事 |
ウエルポイント施工 | ウエルポイント工事 |
表装 | 壁装 |
建設機械施工 | 押土・整地 |
積込み | |
掘削 | |
締固め | |
築炉 | 築炉 |
職種 | 作業名 |
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鋳造 | 鋳鉄鋳物鋳造 |
非鉄金属鋳物鋳造 | |
鍛造 | ハンマ型鋳造 |
プレス型鋳造 | |
ダイカスト | ホットチャンバダイカスト |
コールドチャンバダイカスト | |
機械加工 | 普通旋盤 |
フライス盤 | |
数値制御旋盤 | |
金属プレス加工 | 金属プレス |
鉄工 | 構造物鉄工 |
工場板金 | 機械板金 |
めっき | 電気めっき |
溶融亜鉛めっき | |
アルミニウム陽極酸化処理 | 陽極酸化処理 |
仕上げ | 治工具仕上げ |
金型仕上げ | |
機械組立て仕上げ | |
機械検査 | 機械検査 |
機械保全 | 機械系保全 |
電子機器組立て | 電子機器組立て |
電気機器組立て | 回転電機組立て |
変圧器組立て | |
配電盤・制御盤組立て | |
開閉制御器具組立て | |
回転電機巻線製作 | |
プリント配線板製造 | プリント配線板設計 |
プリント配線板製造 |
職種 | 作業名 |
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家具製作 | 家具手加工 |
印刷 | オフセット印刷 |
グラビア印刷 | |
製本 | 製本 |
プラスチック成形 | 圧縮成形 |
射出成形 | |
インフレーション成形 | |
ブロー成形 | |
強化プラスチック成形 | 手積み積層成形 |
塗装 | 建築塗装 |
金属塗装 | |
鋼橋塗装 | |
噴霧塗装 | |
溶接 | 手溶接 |
半自動溶接 | |
工業梱包 | 工業梱包 |
紙器・段ボール箱製造 | 印刷箱打抜き |
印刷箱製箱 | |
貼箱製造 | |
段ボール箱製造 | |
陶磁器工業製品製造 | 機械ろくろ成形 |
圧力鋳込み成形 | |
パッド印刷 | |
自動車整備 | 自動車整備 |
ビルクリーニング | ビルクリーニング |
介護 | 介護 |
リネンサプライ | リネンサプライ仕上げ |
宿泊 | 接客・衛生管理 |
コンクリート製品製造 | コンクリート製品製造 |
RPF製造 | RPF製造 |
職種 | 作業名 |
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空港グランドハンドリング | 航空機地上支援 |
航空貨物取扱 | |
客室清掃 |
外国人技能実習制度で受け入れができる職種は86職種158作業(3号は80職種145作業)
実習生への指導の必須項目
前述したように、外国人技能実習制度は、発展途上国の経済発展を担う「人づくり」に協力することが目的です。人手が足りないからといって簡単な業務だけ延々とやらせるということはNGです。
技能実習生が問題なく母国に技術を持ち帰れるように、技能実習期間に必ず指導しなくてはならない業務が、それぞれの職種・作業によって定められています。
あらかじめ、実習計画を定めその内容に沿って実習をし、技術を磨き、母国に技能移転をします。
技能実習法について
平成29年(2017年)11月に外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 について(以下技能実習法という)施行されました。
この法律により技能実習生の受け入れを行ってきた監理団体は許可制に、受け入れ企業(実習実施者)は届け出制となり、技能実習計画も認定制となりました。さらに、監督機関として新たに「外国人技能実習機構」が創設され、監理業務を行おうとする者は、主務大臣の許可を受けねばならなくなりました。
監理団体として満たさなければならない要件が、技能実習法その他の関連法令で規定されています。監理団体は許可を受けた場合であっても、許可の要件を満たさなくなった場合には監理事業の取消が行われる場合があるため、常に法令などの基準を満たして監理事業を適正に行う必要があります。
また、技能実習生の人権侵害に対する禁止規定が設けられ、技能実習生からの申告制度も整えられました。規定に違反した場合は罰則が科されるようになりました。
外国人技能実習制度は法律により技能実習の適正な実施の監督と技能実習生の保護を行っている。
外国人技能実習のトラブルについて
外国人技能実習生のトラブル事案
失踪をしてしまった
外国人技能実習生の問題でよく耳にする「失踪」。動機は様々のため対策も多岐にわたります。
これについては後から詳しく解説いたします。
近隣住民とのトラブルになってしまった
実習生は日本の文化に不慣れなため、ゴミの捨て方や挨拶の仕方など、日本人なら日常生活で当たり前に行っていることが、外国人技能実習生にとっては当たり前ではないということが多々あります。そのような文化の違いが理由で、近隣住民とトラブルになってしまうケースがあるのです。
このようなトラブルが発生させないためには、日本の文化・生活習慣の指導に力を入れている送り出し機関から技能実習生を受け入れることが、重要なポイントです。加えて、日本での配属先で地域特有のルールなどがある場合は、受け入れ企業において、技能実習生に正しく理解させることが重要となります。
事故に遭ってしまった
実習生が業務時間外に事故に遭ってしまい、実習が続けられなくなってしまうという場合があります。こちらも前述したケースと同様に、日本の道路環境や交通ルールなどを理解していないことが原因で起こってしまうケースです。
このような事態を防ぐためには、実習生に日本の交通ルールを日常的に正しく理解させることや、危険なエリアには行かないように指導を行うことが大切です。
技能実習生の失踪の件数
技能実習生の受け入れ件数増加に伴い、技能実習生の失踪件数も年々増加傾向にあります。
日本人労働者であれば、現在従事している仕事を辞めたければ転職という方法がありますが、技能実習生は受け入れ企業に原則3年間(※)は勤めることとなります。つまり、技能実習生には転職という選択肢がないため、現在の仕事を辞めたい事情があっても、母国に帰るか失踪するかの選択肢しかないということです。
失踪というと聞こえが悪いですが、そのような理由から、技能実習生はリスクを負って失踪という選択をしてしまうのです。
特別な事情がある場合(実習実施者が倒産などの理由で技能実習の継続が困難になった場合)は、同じ職種・作業を行う実習実施者に移籍することが出来ます。
なぜ技能実習生が失踪する問題が起こるのか
技能実習生が失踪するには様々な動機があります。
政府が発表した技能実習生の失踪動機を見てみると、「低賃金」「労働時間が長い」「暴力を受けた」など、ほとんどが労働環境の悪さからくるものであることがわかります。
これらが、「技能実習生は奴隷だ」と言われる理由のひとつです。
技能実習生は決して奴隷ではありません。
日本人に仕事をさせても辞めてしまう人が沢山いるような職場環境では、当たり前ですが、技能実習生も辞めたいと思うのが自然です。
技能実習制度本来の目的から逸脱して、奴隷のように技能実習生を安い労働力扱いをしてしまうことが、失踪などのトラブルに繋がってしまうことを忘れないでいただきたいと切に願います。
もし外国人技能実習生が失踪した場合は
監理団体へ直ちに連絡
朝、出勤するはずの実習生が出勤しない場合(無断出勤)、既に失踪している可能性があります。実習生の宿舎を確認し、荷物が無い、本人がいない場合はただちに監理団体へ連絡をしてください。
同じ部屋に住んでいる実習生がいる場合は行方を知らないか、昨日までにおかしい様子が無かったかを確認、居なくなった本人にも連絡を取ります。
失踪した場合の手続き
いくら連絡をしても応答がなかったら、失踪と判断し、最寄りの警察署へ行方不明届出書を提出します。(在留カード、パスポートの写しなどを行方不明者の情報が分かる書類を持参します)
また、外国人技能実習機構にも失踪届の受理番号、失踪の状況などについて記載した「技能実習困難時届出書」の提出が必要です。
外国人技能実習生のトラブルを防ぐために
奴隷制度ではない技能実習制度を正しく理解
技能自習制度を安い労働力を得る手段だと捉えてしまうと、結果は誰も幸せになれません。技能実習制度本来の目的を理解し、法令に基づいた技能実習を実施することが大切です。
労働環境を整える
実習生には日本人と同様に労働法が適用されます。日本人と同等の扱いをし、働く環境を整えることでトラブルを防ぐことができます。日本人でも辞めてしまう人が多い労働環境であれば、監理団体指導のもと改善していくことが必要です。
技能実習生と信頼関係を築く
話したことが正確に伝わっているか、疑問や不安がないかなど、丁寧に確認をすることで、信頼関係を築いていくことが大切です。技能実習生と適切にコミュニケーションをとり、互いの理解を深めることが、トラブル防止に繋がります。
信頼できる監理団体を選ぶ
技能実習は実習生と受け入れ企業だけでできるものではありません。技能実習を正しく実施するためには、信頼できる監理団体が必要です。
技能実習制度に精通している監理団体のサポートが、正しい技能実習の実施に導きます。
当組合では、技能実習生に係わるトラブル防ぐために、豊富な知識と万全な体制で企業様の技能実習をサポートいたします。