技能実習生との食い違いを防ぐコミュニケーションのポイント3つ+α
実習計画をきっちり立てたのにうまくいかない実習実施者様がいるかもしれません。 原因のひとつに技能実習生とのコミュニケーション不足があります。 実習生に仕事で指示や指摘をしても伝わっていなかった、など意思疎通が取れなくて困ったことはありませんか?また、もっと実習生とコミュニケーションをとって信頼関係を築きたいと思っている実習実施者様向けに説明いたします。日本語を勉強してきたと言っても日本人並に話せるわけではありません。実習生への対応方法、どんな言い回しをしたら理解しやすいのか、解説いたします。是非、実習生とのコミュニケーションにお役立てください。
step1技能実習生の表情を見て、確かめながら話す
理解の確認、わかりませんと言える間を作る
表情やしぐさで実習生が本当に理解しているのか気にかけます。実習生は、分かっていなくてもその時の指導者の威圧や雰囲気で分かったという事もあります。実習生が分からないと言える雰囲気づくりが大切です。
分かりやすい日本語は日本語習得に繋がる
理解できるレベルの言葉をたくさん使って、やさしい日本語で話してあげることで実習生の日本語力向上に繋がります。実習生も日本語が通じているという安心感から日本語への嫌悪感が抱かず、もっと習得しようとするでしょう。技能実習生の日本語を使ったコミュニケーションの力をもっと伸ばしてあげたい、そう思ったら、是非わかりやすい日本語で話してあげてください。
分かってもらおうという気持ちが大切
実習生も相手に興味を持ってもらえたらそれに応えようとしてくれるはずです。まずは、こちらから関心を持ち、わかってもらおうと努めることで技能実習生の日本語の習得も進むでしょう。
step2技能実習生が理解しているのか都度「確認」する
「わかりましたか?」と聞いて、「わかりました」と返って来たのにわかっていなかった、なんてことが起こった時は、以下の確認方法を試してみてください。
例1K:日本人担当者 P:技能実習生
K:コップにお茶を入れます。その次に台を拭きます。わかりましたか?
P:はい、わかりました。
K:じゃあ、最初に何をしますか?
P:コップにお茶をいれます。
K:次は何をしますか?
P:台を拭きます。
例2K:日本人担当者 P:技能実習生
K:この袋に小を10個つめてください。
P:わかりました。
K:じゃあ、この袋に何をつめますか?
P:「小」です。
K:いくつ、つめますか?
P:10個です。
K:じゃあ、言ってみて。
P:この袋に「小」を10個つめます。
※最初から完璧に言えるのは難しいので、根気強くコミュニケーションをとることが大切です。
step3技能実習生に伝わりやすい日本語の話し方
はっきり、ゆっくりと話す
言葉をつなげずに、かたまりごとにわけて、そのかたまりごとにみます
昨日 / 何を / たべましたか?
ここの / 電気は / 夜も / 消しません。
大事なポイントを繰り返す
時間や場所などの大事なことは間違えないように何度か繰り返して理解してもらいます。試験のようなきつい言い方にならないように気を付けて、「大切なことだから確認している」ということを理解してもらいましょう。
例K:日本人担当者P:技能実習生
K:明日は、9時に会議室に集合してください。9時、9時に、会議室です。わかりましたか?
P:はい、わかりました。
K:何時に集合ですか?
P:9時です。
K:そうですね、どこに集合ですか?
P:会議室です。
K:そうです、9時に会議室に集合です。
短い文章で簡潔に
日本人だから分かる言い回しは実習生には結局どうしたらいいのか、理解できないことがあります。以下を参考に一文を短く簡潔にして説明してあげましょう。
-
この洗濯物を干し終わったら、その後外に干してある洗濯物を中に入れて、畳みます。
→この洗濯物を干します。終わったら、干してある洗濯物を中に入れます。これを畳みます。 -
佐藤さんは体調が悪いとか言って、もう帰ったみたいですよ。
→佐藤さんは体調不良です。帰りました。 -
この道をまっすぐ行ったら、右に曲がって、左側にバス停があります。
→この道をまっすぐ行きます。右に曲がります。左側にバス停があります。
標準語での会話を心がける
ほとんどの技能実習生たちは、母国で標準語の日本語を勉強してきています。日本に入国してから初めて方言をきくことになるので、全く理解ができません。大事な業務の内容などを伝える際は、標準語で話してあげましょう。日常のコミュニケーションでは、方言を交えて話すことが、実習実施者様と技能実習生との仲を深めることに繋がることもありますので、コミュニケーションの話題として方言を教えることもいいでしょう。
です・ます調に変更した方が分かりやすい
日本語を初めて学ぶ時は「です・ます」調で学びます。また、疑問文は「~か?」で終わる文章で学んできています。そのため、日本に来てすぐは「明日やすみ?」 と“友達言葉”で会話を投げかけると、理解できないことがあります。「明日は休みですか?」と言い換えましょう。
助詞が抜けると理解しにくいことがあるので、省略はなるべく避けましょう。
普段会話の中で、主語を言わない場合がありますが、話す中で主語を入れると分かりやすくなります。
- 兄弟何人?→兄弟は何人ですか?
- コンビニで何買うの?→○○さんは、コンビニで何をかいますか?
- これは使わないよ。→これは、使いません。
- 昨日はどこもいかなかったよ。どっか行った?
→わたしは、昨日どこへも行きませんでした。○○さんは、どこかへ行きましたか?
漢字の言葉は他の言い方に変更
日本語はひらがな・カタカナ・漢字と表記が複数あるので、日本語にまだ慣れていない技能実習生は漢字の言葉は理解できないことがあります。
漢字の言葉で伝わらない時は、和語に言い換えてみることをオススメします。
作業でよく使われる表現は覚えてもらってください。
例:研磨、裁断、確認
- 明日は8時に集合して下さい。→明日は8時に集まってください。
- この作業は4時に終了します。→この作業は4時に終わります。
- 休憩していいよ。→休んでいいですよ。
- いつ帰国するの?→いつ国に帰りますか?
実習中よく使うけど外国人にはわかりにくい漢字熟語の例
朝食・昼食・夕食 | 朝ごはん・昼ごはん・晩御飯 |
開始 | 始める、始める |
停止 | 止める、止まる |
終了 | 終わる |
休憩 | 休む |
指導 | 教える |
集合 | 集まる |
開店 | 店が始まる |
閉店 | 店がおわる |
帰国 | 国に帰る |
新しい言葉は繰り返したり、言い換えたりでわかりやすく
「集合→集まります→ここに来ます」分からない言葉は易しい言葉で言い換えていくと技能実習生も理解ができるようになってきます。また、何度も繰り返し教えることで新しい言葉でも覚えやすくなります。
敬語は使わない
敬語や丁寧な言葉も技能実習生にはとても難しいです。
- お母さんおいくつ?→お母さんは何歳ですか?
- ご両親はお元気ですか?→お父さんとお母さんは元気ですか?
- どちらに住んでいらっしゃるの? →どこに住んでいますか?
- ○○さんこれを社長にお見せして下さい。
→○○さん、これを社長に見せてください。
「行かなきゃ」などの短縮形を使わない
「食べてしまった」を食べちゃった、「洗っておいて」を「洗っといて」のような言い方を「短縮語」と言います。よく使ってしまいがちですが、技能実習生にはわかりにくい言い方のひとつです。
「~ておいて/~ておいてください。」も難しい表現です。分かってもらえに時は、「~て(ください。)」や「~ます。」を使ってみましょう。
短縮語 | 運んどいて | やっちゃった | 行っちゃおう | しなきゃなんない しなくちゃなんない |
---|---|---|---|---|
共通語 (標準語) |
運んでおいて(ください) | やってしまった | 行ってしまおう | しなければならない |
伝わりやすい言い方 | 運んで(下さい) 運びましょう 運びます |
やりました | 行きましょう 行きます |
して(ください) しましょう します |
文末表現は簡潔に
「この作業は難しいだろうと思う/難しいというわけではない/難しいかもしれない/難しくないわけではない」のように、日本語は文末表現が複雑になりがちで、技能実習生にとって難しいと感じます。実習生には断定的な表現で伝えるよう心がけましょう。
はっきり言うときつく聞こえてしまうかもしれませんが、技能実習生に対しては遠回しに指摘する表現はかえって、トラブルの原因になりかねません。簡潔な言葉で断定的に伝えるようにしましょう。
- このゴミはここに捨てちゃいけないことになっているんだ。
→このゴミはここに捨ててはいけません。/捨てないで。/捨てません。 - これは失敗というわけじゃないんだけど、作り直した方がいいかもしれないよ。
→これはだめです。/悪いです。 作り直しましょう。 - うーん、明日はちょっと…。子供と遊びに行こうかと思っているんだ。
→ごめんね、明日はいけないよ。子供と遊びにいくから。 - ○○さんは今日、休みなんじゃないかな。
→○○さんは今日休みです。/いません。
プラスα
擬態語は通じそうだけど…
「ギザギザ」「しゅわしゅわ」「ぴかぴか」といった言葉を「擬態語」といいます。日本人同士ならイメージが伝わりやすくよく使うので、外国人にも伝わりそうですが、外国人には通じません。 「ここポタポタと水滴が落ちて濡れるから気を付けてね」→「ここは水滴が落ちてきます。滑ります。気を付けましょう。」など、状況に応じて分かりやすい言葉を話しましょう。
カタカナ言葉もむずかしい
カタカナの言葉は英語に近く、伝わりやすいと思われがちですが、商品名や和製英語が多く、技能実習生には伝わりにくいです。外国人は和製英語を日本語として覚えます。 カタカナの単語はわかりやすい日本語に置き換えにくい言葉もあるので、理解を確認して使う必要があります。
否定疑問文は紛らわしい
「行きませんでしたか?」のように、否定を含んだ質問の文を否定疑問文といいます。「行きませんでしたか?」に対して、「はい」と答えたら日本語では「行かなかった」の意味ですが、言語によっては反対の「行った」の意味になることもあります。実習生はまだ日本語が堪能ではありません。はい・いいえで答えることも多く、誤解を生む可能性があります。そのため、質問は「行きましたか」のように、否定の入っていない文で質問するようにしましょう。
技能実習生とのコミュニケーションに交換日記を取り入れている企業様もいらっしゃいます。
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